映画ギヴン

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2024.11.11

ライブイベント「ギヴン-海へ-」横浜公演オフィシャルレポートが到着!
ギヴン&syh&センチミリメンタル、オーディエンスと『ギヴン』の物語を共有したライブイベント
<ライブレポート>
ライブイベント「ギヴン-海へ-」
2024年11月10日(日)神奈川・KT Zepp Yokohama 

キヅナツキによる漫画を原作としたアニメ『ギヴン』シリーズが、ついに完結を迎えた。
現在は、シリーズ完結作となる『映画 ギヴン 海へ』が絶賛上映中。
そして、ギヴン(矢野奨吾)、 syh(今井文也)、 センチミリメンタルが出演するライブイベント『ギヴン-海へ-』が開催中だ。

バンド活動に打ち込む登場人物たちが、喪失や痛み、葛藤とともに生きる術を音楽に見出していく姿を描いた『ギヴン』の物語にとって、音楽は切っても切れないもの。
劇中バンド「ギヴン」のボーカル&ギター・佐藤真冬を演じる矢野奨吾と、
劇中バンド「syh」のボーカル&ベース・鹿島 柊を演じる今井文也は、現実世界でもアーティストデビューし、
2020年、2024年にそれぞれライブを経験した。このたび実現したライブイベント『ギヴン-海へ-』では、
『ギヴン』シリーズの主題歌や劇中歌を手掛けたセンチミリメンタルも含む3組が集結し、大阪・名古屋・横浜のライブハウスをまわった。
なお、3組が一堂に会するライブイベントの開催は今回が初。貴重な機会にチケットの応募が殺到したことから、追加公演も決定している。

この記事では、11月10日に開催されたKT Zepp Yokohama公演をレポート。
オープニング映像を経て、ステージに明かりがつくと、そこには真冬と同じギブソンを構えた矢野がいた。
1曲目は、ギヴンの初のオリジナル曲「冬のはなし」だ。ギターを掻き鳴らしながら、情熱的かつ純度の高い歌声を響かせる矢野。
アニメ第9話の真冬を彷彿とさせるその姿に、フロアから大きな歓声が上がった。


興奮が冷める暇はなく、インスト曲「session」がスタート。
アニメ第1話でのスタジオ練の映像をリアルタイムで流しながら、バンドメンバーが演奏するという何とも贅沢な映像&音楽体験だ。
演者の実際の動きをモーションキャプチャーで収録し、3DCGに反映させることで演奏シーンのリアルさを追求した、このアニメだからこそ可能な演出と言えるだろう。

3曲目は、センチミリメンタルによる「キヅアト」。センチミリメンタルが「歌って!」と促すと、観客がフレーズをともに歌い、『ギヴン』愛が確かに共有された。


その後矢野が再び登場し、「夜が明ける」を歌い上げたところで最初のブロックは終了。
矢野による短いMCを挟み、中山春樹、梶 秋彦、村田雨月のシーンで構成された映像から、次のブロックが始まった。
名場面のプレイバックにフロアから歓声が上がる中、センチミリメンタルによる『映画 ギヴン』の主題歌「僕らだけの主題歌」へ。
『ギヴン』の世界に入り込んだような没入感がたまらない。エネルギッシュなバンドサウンドに拳を上げていた観客は、
雨月の存在を感じさせるストリングスの鳴るアウトロまで、じっくりと聴き入っていた。
過去の出来事をなかったことにするのではなく、自分の、あるいは相手の一部として認め、受け入れ、愛していく。
そんな『ギヴン』の精神性と観客の音楽の受け取り方が、ばっちりとリンクしている。

次に披露されたのは矢野が歌う「へたくそ」で、矢野がメロディに乗せて〈だから声を聴かせて〉と投げかけると、フロアから大きなシンガロングが返ってきた。
観客の歌声を受け取りつつ、両手を広げ、全身で喜びを表現していた矢野。
MCでは息を弾ませながら、「みんな、コール&レスポンスありがとう!これが聴きたくて、ここまで頑張ってきました!」と笑顔。
矢野が出演した2020年のライブイベント『ギヴン-夜が明ける-』では声出しNGだったため、この瞬間をずっと望んでいたのだろう。


今ツアーでライブ初披露の「うらがわの存在」を矢野が歌うと、syhをフィーチャーした映像を挟み、今度は今井が登場だ。
「柊には華がある」――劇中の上ノ山立夏の台詞を思い出させる輝かしいオーラを纏う今井が、まず初めに歌ったのは「ストレイト」。
今年3月のライブイベント『syh -映画 ギヴン 柊mix-』ではボーカルに専念した今井だが、今回はベースを弾きながらの歌唱に挑戦。
このツアーで披露しようと練習を重ねてきたのだろう。間奏のベースソロでは歪んだ音色をぶっ放した今井は、いたずらっ子のように笑っている。
“初めてのことに挑戦する”という域を超えて、いちベーシストとして純粋に音楽を楽しむ姿が頼もしく、痛快だ。
また、サポートギタリストと向き合って鳴らす様子は、まるで柊と立夏のよう。躍動感のある音像は、性格は合わないが互いをリスペクトしている柊と立夏の関係性、
「音楽ってやっぱり楽しい」という気持ちを媒介とした繋がりをイメージさせてくれる。


ライブ後半に向けて、「横浜、まだまだいけますか!」と観客に力強い言葉を投げかけた今井は、
「それじゃあ、早速! ……お水を飲ませてください(笑)」と場を和ませることも忘れない。
「泣いても笑っても年内最後。悔いのないように遊んでいきましょう」というMCのあと、披露されたのは「パレイド」だ。
syhのメジャーデビュー曲ということで、ブラスやストリングスを取り入れたかなり華やかなアレンジが施されているこの曲。
演奏中にはステージがビビッド&カラフルな照明に彩られ、フロア上空ではミラーボールまで回るが、
それら全てを背負って前線に立つ今井の佇まい、そしてボーカルは格別の存在感を放っていた。
その後、センチミリメンタルによる『映画 ギヴン 柊mix』の主題歌「スーパーウルトラ I LOVE YOU」へ。
理路整然とした文章にはなり得ない、心というキャパシティから溢れた感情をそのまま放出させるような、熱量の高いボーカルだ。

矢野、今井、センチミリメンタルの3名が揃ってのMCでは、『映画 ギヴン 海へ』の好きなシーンを和気あいあいと語り合ったほか、
豪華声優陣からのメッセージVTRが放映された。
本編は残すところ3曲。「誰から歌う?」という会話の末、ステージに残ったのは矢野で、
次に歌う「まるつけ」のことを「自分のことを歌詞にしてくれているんじゃないかと思った曲」と紹介した。
矢野は、声優の仕事を始めてから自分の不器用さを実感しているが、周囲の人の存在に支えられながら、
「足掻きながら、這いつくばりながらでも、一歩ずつ進めている」実感があるという。
同じような気持ちを抱えた人に「大丈夫だよ」「一人じゃないよ」と伝えたい。そんな想いが込められた歌声は、とても穏やかだった。

続いては、センチミリメンタルの歌う『映画 ギヴン 海へ』の主題歌「結言」だ。
センチミリメンタルが9年前に制作して以降歌い続けてきた“人生で一番大事な曲”だが、
『ギヴン』にこの曲を捧げようと決めてからはライブで歌うことを控えていたという。
『ギヴン』の物語やキャラクターの心情にそっと寄り添う“静”のボーカルと、
ステージに全てを置いていこうという気概に満ちた“動”のボーカル。そのコントラストが鮮烈な印象を残した。


矢野の「まるつけ」、センチミリメンタルの「結言」からは、2人の人生にとって『ギヴン』という作品がいかに大きな存在であるかが伝わってきた。
そして2人からバトンを受け取った今井の見事な歌唱によって、本編が締め括られる。
本編ラストに披露されたのは、『映画 ギヴン 海へ』の劇中歌「海へ」。〈いつか忘れちゃうから/こうして歌に残しておこう〉。
今井のまっすぐなボーカルによって、歌詞の言葉の一つひとつがリスナーの心の奥深くに着地する。
みんなで、それぞれに、『ギヴン』という物語に想いを傾ける。全フレーズを歌いきり、両手をマイクに添えたまま下を向く今井の姿は柊そのものだった。
“演じている”というよりかは、“ライブで「海へ」を歌う”というキャラクターと共通の経験によって、心の在りようが自然と近づいている感じ。
このイベントならではの美しさの詰まったラストシーンだった。


アンコールでは、「キヅアト」「海へ」「冬のはなし」を3人で歌い、貴重なコラボにフロアが沸いた。


ラストのMCでは、まずセンチミリメンタルが、「たくさんの人に愛されて、大きなステージに連れてきてもらったと思っています。
本当にみなさんのおかげです。ありがとうございます」と感謝を言葉にした。
続いて今井は、バンドメンバーとスタジオに入った時間を「学校の放課後みたいな雰囲気」「真剣に音楽に取り組む時間が眩しくて楽しかった」と振り返り、
「鹿島 柊としてこんな素敵な光景を見ることを想定していませんでした。みなさんに支えられてここにいます。ありがとうございます」と語った。
最後には矢野が、「真冬をどうしても演じたい」という気持ちでオーディションに臨んだ頃のことを思い返しながら、
“ギヴンのボーカル&ギター・佐藤真冬”を共に作り上げたセンチミリメンタルや、『ギヴン』ファンへの感謝を語る。
その上で「引き続き『ギヴン』を愛していただければ、これ以上嬉しいことはないです。今後とも応援よろしくお願いします」とまとめた。

こうして終演した『ギヴン-海へ-』横浜公演。『ギヴン』を愛する人たちがひとところに集い、音楽を通じて真冬らの歩みに想いを馳せる、温かな時間となった。


文:蜂須賀ちなみ
Photo by 山川 哲矢

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